せっけんとは?
化学の基本
宇宙にあるすべてのものは、原子という小さな粒からできているそうです。原子の種類を表す元素を、原子番号順に並べたものが周期表です。原子核の周りを、電子が層になってくるくる回っています。一番外側の層にある電子(価電子)の数は、周期表の縦列のグループで同じになるので、性質が似ています。
価電子を互いに共有し合って安定した分子になることを共有結合といいます。
共有結合できる箇所を、価標という1本の棒で表すことができます。炭素には価標が4本あります。価標はいわゆる「原子の手」と考えることができます。
化学の教科書を読み返してみると楽しいですよ。
石けんの基本
図は、ボトルに油脂(トリグリセリド)が入っている様子を表しています。水色の部分は脂肪酸と呼ばれ、実際には、長いもの・短いもの、まっすぐなもの・曲がっているものがあると考えられます。
石けんができるしくみを知りましょう
手作り石けんを作るには、油にアルカリ液を加えて、ぐるぐる混ぜます。すると、化学反応が起こって、石けんとグリセリンができます。
この反応を『ケン化』といい、(分子単位で)1 個の油脂から、1 個のグリセリ
ンと 3 個の石けんを作ることができます。
この図1は、石けんができあがる過程を表す化学式をイラストにしたものです。最も基本になる図ですので、何度も見返して色や形を確認してください。次に、それぞれの物質について、少しくわしく見てみましょう。
アルカリ液
石けん作りには、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)か、水酸化カリウム(苛性カリ)の水溶液を使います。
これらを総称して「アルカリ」と呼ぶことがあります。アルカリとは塩基性の
物質という意味で、水に溶けた時に OH- となる水酸基を有します。
ここからは、特に断らない限り、苛性ソーダを使った石けん作りについて説明
します。
グリセリン
これはグリセリンの構造式です。
構造式は、一部の炭素(C) と水素(H) を省略して表すことがあります。
これを省略せず、立体的に表したのが、図 3 です。
図 2 に最初の図 1 の色を合わせてみましょう。
脂肪酸
図 1 の水色の部分を、脂肪酸といいます。
脂肪酸には多くの種類があり、図のギザギザの部分の長さが違ったり、途中に
違うつながり方が混ざっていたりします。
(例)ラウリン酸
図5
図6
(例)リノール酸
図7
図 1 の色を合わせてみましょう。
図8 ラウリン酸
図9 リノール酸
この脂肪酸の種類が、できた石けんの特徴に、大きく関係しています。
油脂
グリセリンのオレンジ色の部分の代わりに脂肪酸の水色の部分が付いたのが、
油脂です。
脂肪酸が 3 つ付いているので『脂肪酸トリグリセリド』とも呼ばれます。(「トリ」は「3」を意味します)
図 10 は、リノール酸が1 つ、ラウリン酸が 2 つ付いた例です。
これは 3 つともそれぞれ別の脂肪酸が付いていてもかまいません。
図10
石けん(脂肪酸ナトリウム)
油脂から外れた脂肪酸が、苛性ソーダ水のナトリウムと結びついて脂肪酸ナトリウムができます。
これが、石けんです。
(ちなみに詳しく言うとこれはラウリン酸ナトリウム)
図11
このように石けんの原料は、天然の植物や動物に含まれる油脂、または油脂由来の脂肪酸です。石けんは、天然油脂を鹸化してできたもの、または天然油脂由来の脂肪酸を中和してできたものです。
石けんは5,000年の歴史があり安全性が証明されています。せいぜい100年の歴史の合成洗剤は私達が手作りすることは難しく、洗浄力が石けんに比べて劣るので様々な助剤が添加されるのが心配です。
石けんは石油由来の合成洗剤と大きく違う特性があります。
しっかりした濃度になると石けん分子はミセルを作り、中に油汚れを取り込みます。しかし濃度が薄くなるととたんにミセルを崩し、水中のカルシウムなどの金属類と結合して金属石けん(石けんカス)になります。これは魚が食べても無害なものです。
すなわち石鹸は弱アルカリ性の時にだけ洗浄力を発揮し、薄まって中性に近くなれば洗浄力が簡単に失われます。身体を洗うとき、石けんは水でさっと流せばもうそれ以上皮脂を奪うことがありません。肌が荒れているときに皮膚科医が石鹸を勧める理由のひとつがこれです。
また、使ったあと排水として放出されてもすぐに洗浄力を失いますから、浄化槽のバクテリアや水生生物に界面活性作用を及ぼす心配がありません。「弱酸性の洗剤が肌にやさしい」というのは石鹸については当てはまりません。そもそも中性や弱酸性でも洗浄力を失わないのは果たして肌にやさしいのかどうか疑問です。
石鹸は洗剤の中では最も洗浄力が高く、洗浄力が強いアニオン界面活性剤に分類されます。しかし上記で述べたように石けんは石油由来の界面活性剤とは違います。石けん以外のアニオン界面活性剤は原料が石油で価格が安く、肌への作用がきついと言えます。
市販の石鹸と合成洗剤の違いを見分けるのが難しいです。石鹸の原料は天然油脂か脂肪酸です。石けんであれば成分名に、石ケンや脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、または油脂名と水酸化Naまたは水酸化K、などと書いてあります。それ以外のものは合成洗剤(または環境にやさしいアルカリ洗剤など)と考えられます。しかし商品パッケージに石鹸やソープと書いてあっても石鹸じゃないものも多いです。
また、市販のリンスは陽イオン界面活性剤で、髪の表面に洗剤で膜を作るのでサラサラに感じます。首や背中にニキビが出るとしたらおそらくそれが原因でしょうし、頭皮にも同様に影響を与えると容易に考えられるのではないでしょうか。コールドプロセス石けんであれば、髪も顔も身体もひとつの石鹸でまるごと洗ってすっきりしっとりです。
界面活性剤を選びましょう。原料で選びましょう。石鹸こそ必要十分で素晴らしい洗浄剤です。中でもコールドプロセス製法の石鹸は肌をしっとり洗い上げるために作られています。それは使ってみれば実感できることです。石鹸こそがシンプルで豊かで贅沢な洗浄剤であること、根本的なことに多くの方に気付いてほしいです。
食器洗いのコツ:安い無添加の固形石鹸などで食器洗いすると手荒れはしません。市販の食器用洗剤は洗浄力が高く皮脂を奪い皮脂に浸透するとも言われ、食器にまとわりつかせることで水切れが良いとうたう製品もあります。石けんでベタベタさせずにガラスコップを洗うには、しっかり泡を立ててあらい、ひとつずつ流水ですすぎます。ためすすぎをするとミセルが崩れて汚れが再付着してしまいます。
もしわかりづらいことがあればお問い合わせくだされば、できるだけお返事したいと思っています。